2014年7月 のアーカイブ

ドイツ視察4日目~帰国

2014年7月11日 金曜日

7月10日は、午前10時前にホテルを出発し、午前11時半に工業用洗浄機製造のジッペル社を訪問しました。

2014年1月に、富山県魚津市の工場用切断・洗浄機メーカーのスギノマシンが全株取得によりジッペル社を買収、その海外拠点にもなっています。

本日は、ジッペル社のCEOであり、スギノマシンの取締役でもある宮尾宗嗣さんと、ジッペル社の創業者のご長男であるギュンター・ジッペルさんにお会いしてお話を伺いました。

ジッペル社は、1968に創業された、自動車や電機工場での業業用洗浄の分野で欧州第2位のメーカーで、売上高の3分の2をBMW、VWなどの自動車大手が占め、ビールジョッキを大量に同時に洗う機械など、食品関係分野でも強みを持っています。

スギノマシンとは、自動車部品洗浄の分野では、これまで良きライバルでしたが、技術面では重ならない部分の方が大きく、合併の効果は大きいとのことでした。

VWの中国の新工場への売り込みは、VWとジッペル社の長年の信頼関係と、スギノマシンのアジアネットワークが評価されたことにより成功。

最近では、ジッペル社(スギノマシン)と、汚れの検知器メーカー、大学とフラウンホーファー研究所の4社で共同研究を行い、洗った部品に汚れが見つかった場合のみ、再度洗浄するという、新たな洗浄機の開発に成功したそうです。

日本で産総研と共同研究した際には、申請手続きなどが煩雑で、効果も出にくかったのに対し、フラウンホーファーの場合には、先方から積極的に技術提案があるなど、企業の立場に立った対応がされ、スムーズに製品開発が出来たとのお話も伺いました。日本の研究開発支援体制の再整備の必要性を感じました。

総合的にみて、スギノマシンによるジッペル社の買収は、日独の強みを結びつける意味で理想的なものであるとの印象を強く持ちました。

また、ものづくりに対する熱意や哲学に共通点があり、それぞれ欧州とアジア市場に強みを持つ日独の企業の連携は、グローバル展開を考える際のモデルになるものと感じました。


午後5時には、レーゲンスブルク市庁舎を訪問し、ヴォルベルクス市長とラウテンシュレーガー経済振興公社総裁にお会いしました。

はじめに、ヴォルベルクス市長から、レーゲンスブルク市の概要についてのご説明を受けました。

レーゲンスブルク市は、世界遺産に登録されている古い街並を持つ歴史の街であると同時に、大学や先進的企業もあり、若い街でもあります。

人口は約15万人、その内3万人は大学生で、5人に1人が若者ということになります。市の人口は毎年1500人ほど増えているそうです。失業率は3.1%で、完全雇用状態とのこと。

市として、様々な分野の起業の誘致に力を入れており、バイオ、情報技術、セキュリティ、センサーなど、キーテクノロジーを育てるため、市が投資をして企業家のためのセンターをつくり、大学との連携も図っているとのことでした。

次に、ラウテンシュレーガー経済振興公社総裁から、市が主体的に音頭を取って推進している、産業クラスターの4分野(バイオ、ITテクノロジー、センサー、Eーモビリティ)について、それぞれ具体的なご説明を頂きました。

当市では、公社がそれぞれの分野の核となるセンターを建設、関連する企業をそこに集め、大学とも連携をしながら研究開発を進めています。

市として、国際的な展示会にスペースを確保して出展してもらうなどのサポートもしているとのお話でした。

伝統的な美しい街を中心に大学や先進的企業が集積する、ドイツの元気な地方都市のモデルだと感じました。

その後、ミュンヘン空港に向かい、午後9時半出発の便で日本に出発しました。日本時間7月11日午後4時前に羽田に到着、一連の視察が完了しました。

今回学んだドイツでの取り組みを日本の中小企業の競争力強化や地方都市の発展に活かせるよう、政策づくりに努力してまいります。


(ジッペル社の創業者がつくられたゲストハウスで、自家製ビールの醸造装置の前での記念撮影。右から山口泰明先生、宮尾宗嗣CEO、山際大志郎先生、ギュンター・ジッペルさん、私です。)


(初めに、宮尾宗嗣CEOから両社の概要や合併の経緯などについてお話を伺いました。)


(ゲストハウス近くのジッペル社の社屋前にて。)


(これは、ベンツの変速機のパーツの洗浄に使う装置です。約10トンあり、金属板の加工や配管、電気系統の配線まで、すべて自社で行っています。)


(ゲストハウスに戻り、ジッペル社オリジナルのマグカップで乾杯。昼食を頂きながら、お話を伺いました。右はじは、バイエルン伝統の衣装に着替えた宮尾CEOです。)


(レーゲンスブルク市に到着後、小一時間、街の中を散策しました。)


(街の中心にある教会前で山際先生と記念撮影。)


(教会内には、多くのステンドグラスがあり、とてもきれいでした。)


(中世の時代から続く、ドイツ料理レストランの前で。)


(右から、山際大志郎先生、ラウテンシュレーガー経済振興公社総裁、山口泰明先生、ヴォルベルクス市長、私、公社のフェルナンデスプロジェクトマネージャーです。)


(初めに、ヴォルベルクス市長からレーゲンスブルク市の概要についてお聞きしました。)


(次に、ラウテンシュレーガー経済振興公社総裁から、産業クラスター政策の実際についてお話をお聞きし、意見交換を行いました。)

ドイツ視察3日目

2014年7月9日 水曜日

7月9日は、午前9時15分にホテルを出発し、近くの「ドイツ博物館」を見学しました。

世界最大の自然科学、工業技術博物館だけあって、船舶や自動車、航空機や印刷機など、様々な分野におけるドイツのものづくりの歴史の厚みを感じました。

特に、1906年に作られた全長42メートル、重さ200トンのUボートの現物展示は、ディーゼルエンジンとモーター、バッテリーや居室、魚雷発射装置なども確認でき、当時の技術力の高さを実感しました。

午前11時には、バイエルン州経済省を訪問し、プシーラー次官とシュミット中小企業財政支援部長、アジア海外経済関係担当のシュヴィムベックさんにお会いしてお話を伺いました。

バイエルン州にはジーメンス、BMW、アウディ、アディダス、プーマなどの国際企業も多く、2003から10年間には、ドイツ全体の平均成長率13.6%を上回る20.9%の成長率を記録しています。

バイエルン州として、中小企業創業サポート、研究テクノロジーサポート、経済構造強化策、大学・職業教育などの政策をとっています。19の分野で産業クラスターがつくられ、中小企業がそのネットワークを活用しているとのことでした。

午後1時からドイツ料理レストランで昼食を取った後、午後2時半にフラウンホーファー協会本部を訪問し、国際ビジネス部門のディレクターであるラオウル・クリンガーさんから、フラウンホーファーの概要や役割についてのお話を伺いました。

フラウンホーファー協会はドイツ国内各地に67の独立した研究上を持ち、2万3千人が働く大組織です。

大学やマックス・プランクなどの研究機関の基礎研究と、革新的企業の新製品開発の間をつなぐ、技術的な調査・開発を担っています。

結果として、国際的にも競争力のある製品開発に貢献していることを感じました。

午後5時には、フラウンホーファーと連携して医療機器システムの開発を行った企業であるイェナヴァルブ社を訪問し、ヴェーゼラウCEOから、その経緯や同社の製品などについてお聞きしました。

当社は、2006年に設立後、心臓の大動脈弁の疾患を治療する人工弁のシステムに関するイエナ大学の2人の教授のアイデアを基に、フラウンホーファーのイエナの研究所と製造方法についての技術開発を行い、それを基に委託製造を開始しました。

2012年からシステムの販売を開始、患者の負担が少なく、入院日数も少くてすむことが評価され、ヨーロッパやアメリカで着実に売上を伸ばしています。

フラウンホーファーの技術力が新たな製品開発に繋がった実例であり、地域の大学などと連携した応用研究を行う研究所の重要性を再認識しました。

ここで、伊藤達也先生と福田達夫先生は、一足早く帰国されるため空港に向かい、我々は、400年以上の歴史を持つビアホール「ホフブロイハウス」に向かいました。美味しいビールや料理と伝統的な音楽や踊りを楽しむことが出来ました。


( ドイツ博物館入り口での記念撮影です。)


( ユーボートの船体の横で山際先生と。 )


( 初期の飛行機であるユンカースの内部も見ることが出来ました。)


( バイエルン州経済省でお話を伺った後で、アジア海外経済関係担当のシュヴィムベックさんを囲んで一枚。)


( フラウンホーファー協会では、ラオウル・クリンガーさん(写真右)からお話を伺いました。)


( フラウンホーファーの果たしている機能の図解です。)


(  イェナヴァルブ社の入り口でヴェーゼラウCEOを囲んで。)


( 当社が開発した人工弁は、カテーテルで心臓に送られ、弁の位置で王冠の様な形に広がる仕組みです。)


( 「ホフブロイハウス」の前での一枚。)


( 「ホフブロイハウス」の広いホールです。)


( 笑顔で乾杯。)


( ミュンヘンの夜の街並みがとても綺麗でした。)

初期の飛行機であるユンカースの内部も見ることが出来ました。

ドイツ視察2日目

2014年7月8日 火曜日

7月8日は、午前9時にホテルを出発し、午前10時にシュレッター社を訪問しました。

当社は、1983年に金属加工会社として創業、様々な分野の製品を製造していましたが、2001年に太陽光発電パネルの支持台システムの発売を開始、2005年に海外進出を開始し、以来10年間で社員も売り上げも20倍になり、現在は従業員1200名、売上3億ユーロのトップ企業となっています。

太陽光発電架台の他に、電気自動車用充電ステーション、鉄道車両内装なども手がけています。

競争力の秘訣は、製造工程の徹底的な効率化と、支持の部品を臨機応変に組み合わせることができるシステムの特許、部品精度の高さに対する高い評価などによるものだそうです。

海外展開については、商工会議所のミッションでの海外へのセールスやメッセ出店に対する支援が役立ったとのこと。

社員の教育にも力を入れており、経営者と社員が家族のような信頼感で結ばれていることも会社の成長を支えているのではないかと感じました。

昼食の後、午後2時半には、マックス・ランク・イノベーションを訪問しました。

この会社は、国と州が50%づつを支出して基礎研究を専門に行うマックス・プランク協会の100%子会社であり、協会傘下の研究所で得られた成果の特許取得や産業界への技術移転、スピンオフによる起業の支援などを業務としています。

具体的な実績として、1979年以降に2000のライセンス・アグリーメントを締結、1990年以降に108の起業があったそうです。

協会における研究体制は283部門に分かれており、それぞれのディレクター(責任者)の60%は、外国人だそうです。2年に1度、過去の研究成果の外部評価を受け、5年に1度は研究の将来性についての外部評価を受けるとのこと。そうした適正なガバナンスが機能しているのだと思います。

また、応用研究を中心としているフラウン・ホーファー協会と共同プロジェクトを組むこともあるそうです。研究開発体制の厚みを感じました。

午後4時にはBMWの本社を訪問しました。

始めに、ゼグラー上級副社長からBMWの概要についてご説明を頂きました。様々な規制強化のスピードが開発のスピードを上回ることも多く、規制をクリアするために車は重くなる傾向にあること、炭素繊維などにより車の軽量化に取り組んでおり、この分野では大学の研究よりも進んでいることなどのお話が印象的でした。

また、皆が大学に行くようになり、現場と経営者をつなぐ中間管理職が不足しているとの指摘もありました。

その後、約1時間かけて工場内をご案内頂き、製造工程を見学しました。様々な車種に対応した車体の溶接や塗装など、多くの工程でロボットによる徹底した自動化が図られているのに感銘を受けました。複雑な組み付け作業は人が作業しており、みな誇りをもって働いているとのことでした。

改めてBMWの強さと魅力を感じた見学でした。

午後7時からは、日本食レストランで夕食をとりながら、日独産業協力推進委員会のゲアハルト・ヴィースホイ理事長からのヒアリングと意見交換が行われました。

ドイツにおける中小企業は370万社、大企業は2万社あること、中小企業は売上で36%、雇用者数で1500万人、全体の60%を占めること、成功している中小企業がドイツ国内に広く分布していること、中小企業は地域の貯蓄銀行から資金調達を行い、都市ごとに存在する貯蓄銀行のホールディングカンパニーからのチェックを受けること、政府の「中小企業イノベーションプログラム」による支援が容易に受けられること、このプログラムの成功率は約70%であること、中小企業の95%が同族企業であり、長期的な視点に立って、経営にあたると同時に革新的で国際的でもあること、などについて具体的なデータに基づくお話を頂きました。

また、今後はドイツ企業と日本企業が合弁や提携によって、お互いを補完する可能性が大きく広がっているとの指摘も頂きました。

さらに、ドイツの今日の発展は、法人税の引き下げなどを大胆に行ったシュレーダー改革が基礎になっていることも伺いました。今後、その改革の全体像について学ぶことが重要であることを感じました。

様々な面で、大変示唆に富むお話を聞くことが出来、大変有意義な夕食を懇談会でした。


( シュレッター社のルートヴィッヒ・シュレッター社長を囲んで記念撮影。 )


( シュレッターの太陽光発電架台システムです。パーツの組み合わせで様々な場所への設置が可能です。 )


( 最終製品の出荷用仕分けスペースです。多様な製品があることが一望できます。 )


( 電動スクーターの充電ステーションの展示もありました。 )


( シュレッター社のまわりは、広々とした田園風景が広がっています。 )


( マックス・プランク・イノベーションのエルゼリウス社長からお話を伺っているところです。 )


( 懇談の後の記念写真です。 )


( BMW本社で、概要説明をお聞きしているところです。 )


( ゼグラー上級副社長を囲んでの記念写真です。 )


( 部屋の窓からは広い工場の敷地が一望出来ました。 )


( ヴィースホイ理事長から食事の前にお話を伺いました。 )


( 夕食懇談会の後の記念写真です。ヴィースホイ理事長には、貴重なお話をお聞かせ頂き、本当にありがとうございました。 )

中小企業・小規模事業者政策調査会 ドイツ議員派遣 1日目

2014年7月7日 月曜日

「ドイツ視察に出発」

7月7日から7月11日まで、「中小企業・小規模事業者政策調査会」の視察でドイツを訪問します。

参加議員は、会長の伊藤達也先生、会長代理の山口泰明先生、経済産業部会長の山際大志郎先生、事務局次長の福田達夫先生、事務総長の私の5名です。

7月7日は、昼に羽田空港に集合し、昼過ぎの便でドイツのミュンヘン空港に出発しました。

ドイツでは、産学官を結びつける公的研究機関が、中小企業の国際競争力強化に大きく貢献し、その結果、製品の世界シェアが3位以内または大陸シェアが1位の中小企業(いわゆる「隠れたチャンピオン企業」)の数でドイツが1307社と、世界一の多さを誇っています。

ちなみに、第2位はアメリカで366社、第3位が日本で220社となっています。

今回の視察では、日本の各地域の中小企業の国際競争力を強化するために何が必要なのかを考えたいと思います。

「無事ドイツに到着、夕食懇談会開催」

7月7日午後5時半(日本時間8日午前0時半)に無事ミュンヘン空港に到着しました。

ホテルにチェックインした後、市内のドイツ料理レストランで柳秀直総領事をはじめとする総領事館の皆様との夕食懇談会が開かれました。

美味しい料理を頂きながら、ドイツの国内事情についてお話をお聞きしました。

ドイツ経済は概ね好調であり、2015年には財政均衡を実現し、赤字国債の発行を46年ぶりに停止する見通しとのことでした。

一方、再生エネルギーに対する助成が膨らみ、電気代が上昇しているのが課題とのこと。

家庭では1kWhあたり32円、中小企業では24〜25円、大手需要家の大企業では17〜18円であり、日本の大手需要家向け料金が8〜9円であるのに比較して、かなり負担が重いと言えます。

今年4月には連邦政府が太陽光発電や陸上風力発電の年間増設容量の上限の設定などを盛り込んだ法案を閣議決定したそうです。

逆に言えば、電力コストの上昇を乗り越える競争力を持った企業が多いとも言えるのではないでしょうか。明日からの視察では、そうした面についても学びたいと思います。

( 出発前に羽田空港の待合室で撮影した集合写真です。 )

( レストランで、早速ドイツビールで、乾杯。 )

( 骨つきの豚肉にかぶりつく山際先生の勇姿。 )

( レストラン近くの広場に面して、オペラ座と元宮殿の博物館がありました。通りがかった民族衣装をまとった女性に声をかけ、一緒に記念撮影しました。 )