宮下一郎ブログ

消費者問題等調査イタリア第3日目

2023年8月6日

8月6日は、イタリアでの調査の第3日目でした。

お昼過ぎに、在バチカン日本国大使館を訪問し、千葉明特命全権大使から「食品ロス及び食品安全に関する教皇庁の取り組み」と題したお話などを伺いました。

お話を通じて、教皇が設置した総合人間開発省の長官が2021年のFAO主催の会合で、コロナ収束後に全人類の食料安全を保障するために食料システムをグローバルに見直す必要性を訴えたこと、世界最大の支援組織であるカトリック教会の国際カリタス(総裁は菊池・東京大司教)が食糧安全に関する問題に対応していること、環境問題及び貧困問題に関する教皇文章において、食品ロスの問題の重要性が強調されていること、寄付は信仰の実践そのものであることなどを学びました。

さらに、正定事件(1937年に中華民国河北省定正県のカトリック宣教会の外国人宣教師ら9人のヨーロッパ人が、謎の武装勢力に拉致され殺害された事件)について、犯人も動機も不明なまま捜査が終了しているにも関わらず、事件被害者スフラーフェン司教の出身国オランダ、中国などで「200人の婦女子を慰安婦徴用した日本軍に対し、宣教師らが抵抗したため殺害された」という事実と異なる日本軍による犯行説が流布され、さらにオランダの司教区などの申請により、被害者を福者に列する「列福審査」の開始が決定された問題に関し、現状のご報告と、今後の対応についてお話を伺いました。

この問題は、以前から稲田朋美先生が取り組まれているものです。宗教上の観点から、列福審査が行われることは当然のことですが、「日本軍による犯行」との誤った事実認定が行われることはあってはなりません。大使には、多くの皆様に理解を頂けるよう、一層のお力添えをお願いしました。

午後4時からは、高級食材を中心に扱う大規模スーパーの「EATALY」を訪問し、店長のマッテオ・ニケッティさんから店内を案内いただきながらお話を伺いました。

ベーカリーでは、有機栽培の小麦のみを使用し、売れ残った場合には焼き直して料理の飾りとしてつかったり、フードバンクに寄付したりしているとのこと。

また、「生産者の広場」というコーナーでは、地元の生産者によるキノコ製品、パン、グルテンフリー製品などを扱っているそうです。

また、近隣の農家による有機農産物を「0キロメートルの有機栽培」のコーナーで販売されているとのこと。

また、50キロ離れた牧場から水牛の乳を毎朝運んでもらい、店内でモッツェレラチーズをつくっているとのことで、実際に水牛を育てている農家の方にお話を伺うとともに、おいしいチーズを試食させていただきました。

水産物コーナーでは、イタリア半島の西側の海域でとれた魚に、表示を行い、地元産のものとして付加価値をつけて販売されているとのことでした。

最上階には立派な料理教室があり、週に5日から6日教室が開かれ、原材料の季節に合わせた選び方や調理法が学べるそうです。

最後に、1階のコーヒーショップで様々なお話を伺いました。

食品ロスに関連しては、パン、パスタ、お米、ビスケットなどの寄附を3から5か所に行っていること、仕入れ専門家とセールス部門が連携して、できるだけ売れ残りをなくし、廃棄量を減らす努力をしていること、ワインに関し、フランスは約10種の原産種についてゾーニングをしてブランドを高めて高級ワインの生産に努力してきたが、イタリアは100種類のワインを自ら消費するために各地で生産を行ってきた歴史があることなどについて知ることができました。

地域の食材を大切に、価値を高め、環境にも配慮した仕入れと販売を心掛けている点で素晴らしい取り組みだと感じました。


在バチカン日本国大使館で千葉明特命全権大使からお話を伺っているところです。


千葉明大使を囲んで記念撮影を行いました。


大型スーパー「EATALY」で、店長のマッテオ・ニケッティさんからお話を伺っているところです。


地元のキノコ製品などがならぶ「生産者の広場」のコーナーです。


水牛の放牧をされている農家の方から直接お話を伺いました。230ヘクタールの牧場で700頭の水牛を飼育されているそうです。


水牛の乳から作られたおいしいモッツェレラチーズを試食させていただきました。


地元産の小麦を中心とした材料で作られるビールの醸造施設もありました。


水産物販売コーナーに掲げられた、イタリアの近海でとれた魚であることを示す「FAO37.1.3」という表示についての説明パネルです。


最上階には、立派な料理教室がありました。


最後に、コーヒーショップでの懇談で、私から質問をしているところです。


視察終了時に、お店の前で、店長さんを囲んで記念撮影を行いました。

消費者問題等調査イタリア第2日目

2023年8月5日

8月5日は、イタリアでの調査の2日目。

午前11時から約2時間にわたって、フードバンク団体「バンコアリメンターレ」の食品倉庫を訪問しました。

はじめに、物品の保管の状況、寄付物資の受け入れの様子、寄付物資を発送する様子などを見学し、説明を受けました。

次に、財源構成、支援先の状況、法整備の効果、今後の課題などについてお話を伺いました。

支援物資の調達は、農産物欧州支援基金とイタリア農業支援基金によって購入したものが6割で、残りが食品産業界からの加工食品などの寄附と企業の食堂などからの生鮮食料品とのことでした。

出荷先は、教会など430か所の11万人を対象としていますが、コロナとウクライナ問題で増加しており、ニーズには、完全には応えきれていないそうです。

現在9人の常勤スタッフと150人のボランティアによって活動が支えられているとのこと。

2016年の法制度により寄付金優遇税制が導入されたことにより、寄付が集めやすくなったとのこと。

今後は、デジタル技術を活用し、トレーサビリティを強化し、寄付の使い道を公表していきたいとのお話も伺いました。

日本国内でも、こうした活動を支援するための仕組みを充実させることが必要であることを感じました。

午後2時前からは、和食材をつかった料理を出されているレストラン「Osteria Fermanda」を訪問し、説明を受けながら、おいしい料理を頂くとともに、食後にお店の皆様からお話を伺いました。

魚をまいた海苔巻き、のりが練りこまれたパスタやしそや味噌をつかったパスタ、うなぎの照り焼きと梅干のゼリー、さんしょうのジェラートとゆずのかき氷など、イタリア料理と和食材が融合した新しい味を味わうことができました。

こうした料理に取り組むようになったのは、お店の方が日本に行かれて和食を食べたり、イタリアの日本大使館のイベントで味噌の使い方を学んだことなどがきっかけになっており、とくに味噌などの発酵食品に注目しているそうです。

私からは、日本として、日本の農産物や加工食品を多くの欧州の皆さんに届けたいと考えているので、これからも日本の食材の輸入業者の皆様などとも連携し、新しい料理にぜひ取り組んでくださいと、お願いをしました。


フードバンク団体「バンコアリメンターレ」の倉庫で説明を受けているところです。


ちょうど、Amazonから、賞味期限が近付いた食品が寄付として届きました。


私たちから、様々な質問を行い、回答を頂きました。


質疑の後で、皆様と記念撮影をしました。スクリーンに映っているのは、フードバンクの事務局長で、欧州フードバンク連盟の理事もされているマルコルさんです。


イタリア料理と和食の素材が融合した新しい味の世界を堪能しました。


食後にオーナーやシェフと意見交換をしているところです。


最後に、お店の皆様と記念撮影をしました。

消費者問題等調査イタリア第1日目

2023年8月4日

8月4日は、フランスでの日程を終え、イタリアでの調査を行うため、午前中の飛行機でローマに向かいました。

お昼には、FAO本部のレストランで食事をとりながら、大使館の皆様からブリーフィングを受けました。

午後2時前からは、FAOとWHOによって設立されたコーデックス委員会のハイランド事務局長とテクニカルオフィサーのハッファーさんと懇談をしました。

コーデックス委員会は、食品安全や、製造方法、食品表示のガイドラインなどをつくる組織です。これを踏まえ、私からは、処理水放出に関し、IAEAだけでなく、コーデックス委員会としても安全性に関する発信をしてほしいとの要請をしました。

さらに、発がん性があるPAHsの含有を理由に、EUが日本からの鰹節の輸入を禁止している一方で、EU域内で製造されている鰹節については規制がない状態は科学的におかしいこと、ハムやソーセージ、スモークサーモンにもPAHsは含まれているが、通常の食べ方では鰹節の摂取量が少ないことを踏まえると、むしろリスクは少ないことを述べ、科学的な検証と基準作りを要請しました。その結果、今後、日本の消費者庁とコーデックス委員会で連絡を取りながら、検証していくこととなりました。

午後5時からは、環境・エネルギー安全保障省を訪問し、グランディ循環経済部長、EU担当のコラーディさんにお会いしました。

グランディ部長からは、イタリアにおける食品ロス削減の取り組みや制度についてご説明を頂き、特に2016年に施行された「社会的連帯と廃棄物の制限を目的とした食品及び医薬品の寄附と配布に関する規定(通称Gadda法)」の内容について質疑を行いました。

また、これに先立ち、イタリアでは2003年に食品の寄附に関し、重過失がなければ責任を問われない制度として「社会的連帯のための食料分配に関する規定(いわゆる「善きサマリア人の寄附法」)」が施行されています。

我が国においても、食品ロス削減のための寄附の促進のための体制づくりがさらに重要であることを感じました。

夜には、大使公邸で、現地情勢についてのブリーフィングを受けながら、夕食を頂きました。現在のイタリアの政権が抱える課題などについて、大局的に理解をすることができました。


FAO本部に到着時に、鈴木哲特命全権大使が迎えてくださいました。


中央がゴーデックス委員会のトム・ハイランド事務局長、その左がテクニカルオフィサーのハッファーさんです。


冒頭に、稲田朋美委員長から、訪問の趣旨などについてご挨拶がありました。


環境・エネルギー安全保障省での意見交換の様子です。


稲田朋美委員長の左がグランディ循環経済部長、右がEU担当のコラーディさんです。


イタリア大使公邸での記念写真です。

消費者問題等調査フランス第3日目

2023年8月3日

8月3日は、フランスでの消費者問題等調査の3日目。

午前中に、フランス共和国農業・食料主権省を訪問し、モード・フェブ食品総局長をはじめとする皆様と意見交換を行いました。

食品ロス削減に関するこれまでの経緯や、具体的取組、食料主権の考え方などについてお話を伺うとともに、質疑を通じて、日本の食品ロスの方がフランスより小さいこと、豊作で需要以上の農産物が取れた際に食糧支援団体につなぐ団体が活動していることなど、新たな実態についても知ることができました。

昼には、商工会に所属する邦人企業の皆様との懇談会が行われ、株式会社虎屋の市原淳子取締役、東レ株式会社複合材料本部欧州統括の太田賢二郎さん、日本航空パリ支店の西澤宏章支店長と懇談をしました。

皆様からは、フランス国内の日本人旅行客はビジネス客か欧州在住の日本人に限られている現状であること、欧州に比べて日本の賃金と商品やサービスの価格設定が低すぎる点が問題であること、自動車分野での環境対応の現状など、様々なお話を伺うことができました。

午後には、フランス最大のフードバンク団体である「バンク・アリマンテール」を訪問し、食品資源部門責任者のイェスィム・ブロエさんをはじめとする皆様からお話を伺いました。

バンク・アリマンテールは、各エリアごとに設けられた79のフードバンクを通じて、約6000の協力団体に食糧を届けています。また、収集、配布、寄り添い、バランスの良い食事の提供を4つのミッションとして掲げています。

財源は、国や地方からの支援、民間企業からの寄付、一般人からの募金、6000の団体からの会費の支払いから得ているとのこと。さらに、寄付優遇税制による支援も行われています。

足元では、貧困層の拡大もあり、その役割はますます重要になってきているそうです。


フランス共和国農業・食料主権省での意見交換会の様子です。


フランス共和国農業・食料主権省の皆さんとの記念写真です。稲田朋美委員長の左がモード・フェブ食品総局長です。


邦人企業の皆様との懇談会の様子です。


右から、東レ株式会社複合材料本部欧州統括の太田賢二郎さん、私、日本航空パリ支店の西澤宏章支店長、稲田朋美先生、株式会社虎屋の市原淳子取締役、吉田統彦先生です。


バンク・アリマンテールで、食品資源部門責任者のイェスィム・ブロエさんから説明を伺っているところです。


バンク・アリマンテールの皆様との記念写真です。稲田委員長が来ているのは、ブロエさんからプレゼントされたスタッフジャケットです。

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