2023年8月 のアーカイブ

消費者問題等調査イタリア第5日目

2023年8月8日 火曜日

8月8日は、イタリアでの調査の第5日目でした。

午前9時半過ぎにフィレンツェから列車でベネチアに向かい、ベネチア駅からは水上タクシーで昼食会場に向かいました。

昼には、在ミラノ日本国総領事館の小林敏明総領事から「北イタリア情勢及び日・北イタリア関係」についての説明を頂きました。

昼食後に、歩いてベネチア市役所に移動し、午後2時半からは、ベネチア市のシモーネ・ベントゥーリ助役、ステファニア・バッタッジア市民・企業サービス、生活の質担当部長、ベネチア市警察司令部職員の方々と、懇談をしました。

私からは、気候変動に伴う水位上昇などによりベネチアが水害を受けているとの報道があることを踏まえて、現状と対策について質問したところ、ベントゥーリ助役からは、高潮の際に潟をせき止めるMOSEと呼ばれるシステムを30年かけて建設し、最近完成したとのお話を伺いました。(MOSEについては、こちらの紹介記事をご参照ください。)ただし、このシステムによる水位の上昇による被害の防止は2メートルまでであり、長期的な対策をさらに検討する必要があるとのことでした。

また、偽ブランド対策についての質疑が行われ、ベネチアングラスにオリジナルを証明するコードを含むシールを添付したり、警察による偽ブランド品の扱いについて各店舗をチェックしたり、メーカーによるチェックを進めるなどの対策をとり、現在では95パーセントの偽ブランド品の販売を抑止できているとのお話です。

午後3時50分からは、ベネチア市のラウラ・べジオ助役、教育サービス部門担当バルバラ・ミキエレットさん、フランチェスコ・ゾッカテッリ神父をはじめとする「無駄のない食堂プログラム」参加メンバーの皆様と、食品ロス問題をテーマに懇談を行いました。

「無駄のない食堂プログラム」では、13の学校の給食で残ったものを必要な人に配布されているそうです。

このプロジェクトの目的は、2030年アジェンダの達成、格差を無くすこと、子どもの食品ロス削減の意識を高めることとのこと。

また、2016年のサマリア人法によって、寄付の促進が図られたとのお話も伺いました。

最後に、稲田委員長からは、これからも皆様との連携をとりながら、日本の制度の改善につなげていきたいとの趣旨でご挨拶がありました。


列車で橋を渡ると、ベネチアの町が見えてきました。


昼食会場で、在ミラノ日本国総領事館の小林敏明総領事からブリーフィングを受けました。


ベネチア市役所での懇談会の前半で、水位問題や偽ブランド問題について意見交換をしているところです。


ベネチア市役所での懇談会の後半で、食品ロス問題について意見交換をしているところです。


後半の懇談会にご参加くださった皆様との記念写真です。

消費者問題等調査イタリア第4日目

2023年8月7日 月曜日

8月7日は、イタリアでの調査の第4日目でした。

本日は、午前中にローマを出発し、列車でフィレンツェまで移動しました。

午後12時半すぎからは、昼食をとりながら、オペラ歌手の臼井和子さん、画家の道原聡さん、オルガニストの永田麻希子さんからお話を伺いました。

臼井和子さんは、オペラ歌手としての活動とともにトスカーナ日本人会相談役やフィレンツェ市岐阜市友好都市大使などを務められ、日本とイタリアの文化交流イベント開催などでもご活躍をされています。

道原聡さんは、広島市出身で、原爆ドームやイタリアの世界遺産などを題材とした作品を制作される一方、1920年にローマ東京間飛行を成功させたイタリア人飛行士たちの偉業をたたえ、日本の皇后からパイロットを介して、イタリアの王妃に贈られた、当時の東京の7歳から15歳の子どもたちの絵と書を収録した2冊の記念帖を日本に紹介するプロジェクト(https://kinencho1920.com)に取り組まれています。

永田麻希子さんは、ピアノ教師や修道院聖歌隊の指揮者やオルガニストを務められる一方で、日本の子どもたちの音楽の発表会をフィレンツェで開催したり、日本からこられた学生さんにフィレンツェの音楽の先生を紹介するなど、音楽を通じた交流を支援されています。

皆様からは、最近10年ぐらいは、日本からフィレンツェやイタリアに学びに来る若い皆さんが減少しているとのお話を伺いました。芸術の面でも、海外で活躍する若い世代を増やすための取り組みを推進することが重要だと感じました。

午後3時からは、革製品ブランド「シセイ(CISEI)」を立ち上げたデザイナーである大平智生さんの「アトリエ・ボノム」を訪問し、お話を伺いました。

大平さんは、日本の高等専門学校で工業デザインを学ばれた後にフィレンツェに留学し、革製品づくりを本格的に学ばれて2006年にブランドを立ち上げられ、現在は日本をメインの市場としてビジネスを展開されています。

素材の良さを生かした伝統的かつシンプルなデザインで、使いやすさを追求した様々な魅力的な製品を見せていただくことができました。

午後7時からは、日系企業の皆様との夕食会が開催されました。

参加してくださったのは、午後にお会いしたアトリエ・ボノムの大平智生CEO、テキスタイルの企画・生産をされているSTYLEM ITALIAの米沢剛社長、炭素繊維中間基材であるプリプレグの加工・販売をされているDelta-Techの首藤将之社長の3名の皆様です。

皆様から、イタリアでのビジネスの実態など、貴重なお話を伺い、海外でそれぞれの道を切り開いて活躍されている皆様のパワーを感じることができた夕食会でした。


ローマからフィレンツェに向かう列車での記念写真です。


無事にフィレンツェに到着しました。


昼食懇談会に出席いただいた皆様との記念写真です。後列左から臼井和子さん、永田麻希子さん、道原聡さんです。


大平智生さんの「アトリエ・ボノム」で、お話を伺っているところです。


素晴らしい革製品のディスプレイの前で、大平さんと記念撮影をしました。私たちがもっているのは、大平さんがプレゼントしてくださった革製のペンケースです。


夕食懇談会に出席くださった皆様との記念写真です。右から、アトリエ・ボノムの大平智生CEO、私、STYLEM ITALIAの米沢剛社長、稲田朋美先生、Delta-Techの首藤将之社長、吉田統彦先生です。

消費者問題等調査イタリア第3日目

2023年8月6日 日曜日

8月6日は、イタリアでの調査の第3日目でした。

お昼過ぎに、在バチカン日本国大使館を訪問し、千葉明特命全権大使から「食品ロス及び食品安全に関する教皇庁の取り組み」と題したお話などを伺いました。

お話を通じて、教皇が設置した総合人間開発省の長官が2021年のFAO主催の会合で、コロナ収束後に全人類の食料安全を保障するために食料システムをグローバルに見直す必要性を訴えたこと、世界最大の支援組織であるカトリック教会の国際カリタス(総裁は菊池・東京大司教)が食糧安全に関する問題に対応していること、環境問題及び貧困問題に関する教皇文章において、食品ロスの問題の重要性が強調されていること、寄付は信仰の実践そのものであることなどを学びました。

さらに、正定事件(1937年に中華民国河北省定正県のカトリック宣教会の外国人宣教師ら9人のヨーロッパ人が、謎の武装勢力に拉致され殺害された事件)について、犯人も動機も不明なまま捜査が終了しているにも関わらず、事件被害者スフラーフェン司教の出身国オランダ、中国などで「200人の婦女子を慰安婦徴用した日本軍に対し、宣教師らが抵抗したため殺害された」という事実と異なる日本軍による犯行説が流布され、さらにオランダの司教区などの申請により、被害者を福者に列する「列福審査」の開始が決定された問題に関し、現状のご報告と、今後の対応についてお話を伺いました。

この問題は、以前から稲田朋美先生が取り組まれているものです。宗教上の観点から、列福審査が行われることは当然のことですが、「日本軍による犯行」との誤った事実認定が行われることはあってはなりません。大使には、多くの皆様に理解を頂けるよう、一層のお力添えをお願いしました。

午後4時からは、高級食材を中心に扱う大規模スーパーの「EATALY」を訪問し、店長のマッテオ・ニケッティさんから店内を案内いただきながらお話を伺いました。

ベーカリーでは、有機栽培の小麦のみを使用し、売れ残った場合には焼き直して料理の飾りとしてつかったり、フードバンクに寄付したりしているとのこと。

また、「生産者の広場」というコーナーでは、地元の生産者によるキノコ製品、パン、グルテンフリー製品などを扱っているそうです。

また、近隣の農家による有機農産物を「0キロメートルの有機栽培」のコーナーで販売されているとのこと。

また、50キロ離れた牧場から水牛の乳を毎朝運んでもらい、店内でモッツェレラチーズをつくっているとのことで、実際に水牛を育てている農家の方にお話を伺うとともに、おいしいチーズを試食させていただきました。

水産物コーナーでは、イタリア半島の西側の海域でとれた魚に、表示を行い、地元産のものとして付加価値をつけて販売されているとのことでした。

最上階には立派な料理教室があり、週に5日から6日教室が開かれ、原材料の季節に合わせた選び方や調理法が学べるそうです。

最後に、1階のコーヒーショップで様々なお話を伺いました。

食品ロスに関連しては、パン、パスタ、お米、ビスケットなどの寄附を3から5か所に行っていること、仕入れ専門家とセールス部門が連携して、できるだけ売れ残りをなくし、廃棄量を減らす努力をしていること、ワインに関し、フランスは約10種の原産種についてゾーニングをしてブランドを高めて高級ワインの生産に努力してきたが、イタリアは100種類のワインを自ら消費するために各地で生産を行ってきた歴史があることなどについて知ることができました。

地域の食材を大切に、価値を高め、環境にも配慮した仕入れと販売を心掛けている点で素晴らしい取り組みだと感じました。


在バチカン日本国大使館で千葉明特命全権大使からお話を伺っているところです。


千葉明大使を囲んで記念撮影を行いました。


大型スーパー「EATALY」で、店長のマッテオ・ニケッティさんからお話を伺っているところです。


地元のキノコ製品などがならぶ「生産者の広場」のコーナーです。


水牛の放牧をされている農家の方から直接お話を伺いました。230ヘクタールの牧場で700頭の水牛を飼育されているそうです。


水牛の乳から作られたおいしいモッツェレラチーズを試食させていただきました。


地元産の小麦を中心とした材料で作られるビールの醸造施設もありました。


水産物販売コーナーに掲げられた、イタリアの近海でとれた魚であることを示す「FAO37.1.3」という表示についての説明パネルです。


最上階には、立派な料理教室がありました。


最後に、コーヒーショップでの懇談で、私から質問をしているところです。


視察終了時に、お店の前で、店長さんを囲んで記念撮影を行いました。

消費者問題等調査イタリア第2日目

2023年8月5日 土曜日

8月5日は、イタリアでの調査の2日目。

午前11時から約2時間にわたって、フードバンク団体「バンコアリメンターレ」の食品倉庫を訪問しました。

はじめに、物品の保管の状況、寄付物資の受け入れの様子、寄付物資を発送する様子などを見学し、説明を受けました。

次に、財源構成、支援先の状況、法整備の効果、今後の課題などについてお話を伺いました。

支援物資の調達は、農産物欧州支援基金とイタリア農業支援基金によって購入したものが6割で、残りが食品産業界からの加工食品などの寄附と企業の食堂などからの生鮮食料品とのことでした。

出荷先は、教会など430か所の11万人を対象としていますが、コロナとウクライナ問題で増加しており、ニーズには、完全には応えきれていないそうです。

現在9人の常勤スタッフと150人のボランティアによって活動が支えられているとのこと。

2016年の法制度により寄付金優遇税制が導入されたことにより、寄付が集めやすくなったとのこと。

今後は、デジタル技術を活用し、トレーサビリティを強化し、寄付の使い道を公表していきたいとのお話も伺いました。

日本国内でも、こうした活動を支援するための仕組みを充実させることが必要であることを感じました。

午後2時前からは、和食材をつかった料理を出されているレストラン「Osteria Fermanda」を訪問し、説明を受けながら、おいしい料理を頂くとともに、食後にお店の皆様からお話を伺いました。

魚をまいた海苔巻き、のりが練りこまれたパスタやしそや味噌をつかったパスタ、うなぎの照り焼きと梅干のゼリー、さんしょうのジェラートとゆずのかき氷など、イタリア料理と和食材が融合した新しい味を味わうことができました。

こうした料理に取り組むようになったのは、お店の方が日本に行かれて和食を食べたり、イタリアの日本大使館のイベントで味噌の使い方を学んだことなどがきっかけになっており、とくに味噌などの発酵食品に注目しているそうです。

私からは、日本として、日本の農産物や加工食品を多くの欧州の皆さんに届けたいと考えているので、これからも日本の食材の輸入業者の皆様などとも連携し、新しい料理にぜひ取り組んでくださいと、お願いをしました。


フードバンク団体「バンコアリメンターレ」の倉庫で説明を受けているところです。


ちょうど、Amazonから、賞味期限が近付いた食品が寄付として届きました。


私たちから、様々な質問を行い、回答を頂きました。


質疑の後で、皆様と記念撮影をしました。スクリーンに映っているのは、フードバンクの事務局長で、欧州フードバンク連盟の理事もされているマルコルさんです。


イタリア料理と和食の素材が融合した新しい味の世界を堪能しました。


食後にオーナーやシェフと意見交換をしているところです。


最後に、お店の皆様と記念撮影をしました。