前回のブログで述べたとおり、今こそ日本の農業・農地を守り育てることが大切です。こうした観点から、政府・与党は一体となって農産物貿易の国際交渉にあたっても、米や乳製品、砂糖などの重要品目を関税措置によってしっかりと守っていくことが重要であるという主張を貫いてきました。
一方、民主党の小沢代表は、公の会合で、
「自由トレード、自由貿易協定を私はどことでもやれという主張であります。それによって市場価格が国内生産費よりも下がった場合に不足分を払うというのが我々の考えです。」
と述べるなど、一貫して農産物の輸入の自由化の必要性を訴えています。
確かに、農産物を自由化すれば、食料品価格が下がることになり、消費者の立場からすればありがたい面もあります。
しかし、これでは、日本の農業は崩壊し、食糧危機にも対応ができなくなってしまいます。
例えば、60キロあたり1万8000円で売れていた米が、カリフォルニア米などの輸入によって3000円になってしまうことも考えられます。生産費を仮に1万2000円だとしますと、民主党の政策では差額の9000円が支払われますが、農家の手取りは生産費と同額の1万2000円となってしまい、これまでの手取り1万8000円から大幅な減収となってしまいます。これでは、本当の意味での所得保障にはならず、単なる経費補填に過ぎません。
さらに問題なのは、努力して消費者から評価されるおいしいお米をつくっても、高く買ってもらうことができず、経費分しか得られないという点です。これでは、工夫してよい農産物を生産し、所得も増加させていこうという夢は実現できません。
第一、生産コストが全く異なる低価格の農産物を自由に輸入することになれば、国内農産物の消費が落ち込み、国内農業の衰退や農地の荒廃を招くのは火を見るより明らかなことです。
かつて、日本は戦後に大量の住宅建設を行う必要から、木材輸入の自由化を行いました。これにより、国内の木材産業は窮地に追い込まれました。
林業は、外在価格の高騰や、戦後植林した木材が伐期を迎えることにより、復活の兆しが見えてきていますが、農業の場合、一度荒れた農地は復元がほとんど不可能です。
また、WTOなどの国際交渉の場で関税の撤廃を一度表明したら、これを復活することは、まず不可能です。
これらのことを考えれば、小沢代表の農産物貿易自由化論がいかに危険なものであるかがおわかりいただけると思います。
民主党の「農業者戸別所得補償制度に1兆円」では、農業の明るい未来は描けないのです。