7月24日には、衆議院予算委員会、25日には、参議院予算委員会において閉会中審査が行われ、今治市の獣医学部新設問題についての質疑が行われました。
参議院での議論は、安倍総理が加計学園の申請をいつ知ったかという点が主な論点でしたが、この問題の本質は、加計理事長が安倍総理の長年の友人であったために、獣医学部の新設の過程が歪められたか否か、という点にあると思います。
そうした本質を抑えた上で、一つ一つの論点を取り上げて丁寧に質疑を進められたのが、昨日の小野寺五典先生でした。(お時間のある方は、衆議院TVのホームページで是非ご覧頂きたいと思います。)
結論を要約すれば、「今回の獣医学部新設は社会のニーズに沿った規制改革の結果であり、プロセスにおいて総理の政治的圧力がかけられたとは考えられない。」ということです。
以下に、質疑を通じて明確になった論点についてお伝えをします。
1.獣医師は、食肉検査や、鳥インフルエンザ対策などの動物検疫、製薬業界などで不足しているが、獣医系大学は50年以上新設が認められていない。地域的には、四国ブロックだけが獣医系大学が存在していない。
2.加戸前愛媛県知事が、鳥インフルエンザや口蹄疫などの問題に際し、獣医師不足を実感していたところ、愛媛県議会議員と加計学園事務局長が友人関係であったことから、平成19年に獣医学部開設の話がはじまった。他の学校にも働きかけたが、応じてくれた唯一の学校が加計学園であった。
3.国家戦略特区諮問会議ワーキングチーム座長の八田参考人によれば、総理から岩盤規制を打破すべきだとの強い意志は示されたが、特定の事業者を優遇してほしいという意向が示されたことは一度もない。
また、本来、一つの特区で行われた改革が他の特区でも自動的に適用される仕組みとなっているが、本年1月の告示で「平成30年の新設は1校のみ」という限定がついたことで「政府は当初から今治市のみを認めるともりであり、ここに不正があったのではないか」との憶測を呼んだが、これは、複数校の新設を懸念した獣医師会の意向を反映したものであり、総理やその周辺による働きかけによるものではない。
議論の経緯は議事を公開しており、透明性の高いプロセスで行われている。
(八田委員が当日配布された「国家戦略特区 獣医学部の新設について」もご参照ください。)
4.総理は国家戦略特区諮問会議議長として、改革をスピードを持って進めていくよう指示をしてきたが、個別の案件について指示することは全くない。
5.萩生田官房副長官、藤原内閣審議官、山本担当大臣、松野文科大臣のいずれも、総理から獣医学部新設について指示を受けたことがない。
6.前川前文部科学次官は、文科省内の文書にある「官邸の最高レベルが言っていること」「総理のご意向と伺っている」などの記述が正しいと信じていると話しているが、総理に確認したことはない
また、和泉総理補佐官から「国家戦略特区における獣医学部の新設について対応を早く進めろ」「総理は自分の口からは言えないから、代わって自分が言うんだ」と言われ、それ以前に加計学園の木曽理事から要請を受けたことがあったので、これは加計学園のことだと考えた。(推測した)
(なお、和泉総理補佐官は、「総理は自分の口からは言えないから・・・」という発言はしていないと否定している)
前川次官(当時)は、担当の専門教育課を呼んで泉補佐官からの言葉をそのまま伝えたが、大臣や他の局長と協議するようなことはしなかった。
7.この結果、総理の意向ということで文部科学省内での手続きが歪められたということはなく、最終的な判断は、公正中立である審議会において、専門家の委員によって決められた。
最後に、小野寺先生が、同じく獣医学部の新設を計画して認可が得られなかった京都産業大学と京都府知事のコメントを紹介されたのが印象的でした。
京都産業大学は、記者会見で「不透明な決定だとは思わない。納得できない部分も特にない。」と話されています。
また、京都府知事は、「きちっと委員会で判断された。京都府がこれまで取り組んだのは昨年が初めて。加戸さんの愛媛県と比べると我々としては努力が足りなかった。結局、思いの問題だ。どれだけ熱心に獣医学部の必要性を訴えてきたかという話になる。加戸さんは本当に必死になってやってこられた。そして競争に敗れたことについて、恨み言を言う気は全くございません。」と話されたそうです。
小野寺先生は、「当事者、第三者、競争相手も適正と言っているのに、文部科学省の中でいろいろな文書が出てきているのが問題であり、松野大臣と当時の前川次官の信頼関係が密であれば問題にならなかったのではないか」との指摘もされています。至言だと思います。
(衆議院予算委員会で小野寺先生が質問されている様子です。)